が明らかにいつもより女の子らしい、だけどそういうのも似合うじゃんと、思わず目を離せなかった服装で出かけていった。それをわざわざダイゴさんに教えるのは、単純に面白いからなのだと思う。
 この、石好きは全面に出しつつも何でもできる大人のような顔をしているダイゴさんが、のことに限っては悪戦苦闘しているから。


「ユウキくん、今なんて? それは本当かい……?」



 俺が頷くと、ダイゴさんはこの世の終わりのような顔をする。けれど額に手を当てて落ち込む仕草がどことなくキザだ。


「ちなみに会いに行った相手の心当たりはあるかい?」
「まあ」
「そうか……、………」


 はただ、ハルカと予行練習しているだけ。本番のダイゴさんと出かける日に備えているというのに、ダイゴさんは面白いくらい顔をしかめて「はぁ」と重い溜息を吐いている。


「いや、わかっているんだ。ちゃんの前ではつい、いい大人の顔をしてしまうのは」
「でも化石について熱く語ったって聞いてるけど」
「邪な感情を知られたくない、怖がらせてしまいそうで抑えているせいで意識してもらえないのはわかってる。ただの優しい大人枠に入ってるのは僕もわかってるんだよ!」
「でも出来ない、だっけ」
「………」


 ダイゴさんのそんな言い訳じみた言葉を、オレは何回聞いただろうか。


「化石の復元を口実にデートに誘ったくせに」
ちゃんはデートとは思ってないよ」
「……ダイゴさんは」
「僕もデートとは思っていない」
「………」


 好きだと意識したのには明確なきっかけがあったようだけど、多分、会ったその瞬間から好きだった、とダイゴさんは言っていた。名前を知るより前、声を聞く前から。
 も同じようなことをオレに教えてくれた。かなり誤魔化しながらだけど、最初から好きだった、と。

 その二人が何もないまま、今日まで来て、どうにか二人で出かける予定を作ったのに二人共がデートじゃないと否定までしている。
 こんな状況になってしまっているのは明らかにダイゴさんのせいだ。が大切すぎるからと、バトルスタイルからは想像できない奥手を発揮している、ダイゴさんのせいだとオレは思っている。


「そんなこと言ってさ、今日会いにいった男にとられたらダイゴさん、どーすんの」
ちゃんがそれで幸せなら、僕は何も言えないよ」
「あー、今日の可愛かったなー」
「………」
「かわいい、見たくないの?」


 ちら、と視線を送ると、ダイゴさんは、はあっと苛立ち混じりのため息を吐く。


「……、見たいよ」
「スカートでスパッツ無しの
「見たい」
「腕も出てたけど」
「すごくすごく見たいし」
「し?」
「……可愛いちゃんを独り占めしたいよ」


 本当に。については、ダイゴさんもただの男だ。これについては余裕がないんだろう。ただの恋する人間でしかない発言を惜しげも無くしてくれる。だからダイゴさんにはのことを教えたくなってしまうのだ。


「誰と会ってるのかなぁ……」


 呆然と青い空を見上げるダイゴさん。心配しなくてもダイゴさんは、そのデートと思っていない予定の日に、すごく可愛いに会うことになる。だけど教えてはやらない。
 デートとは思わないようにしてたけど、デートかもしれなかった。そんな1日を過ごしたただのダイゴさんの表情が、今から楽しみだ。