※公式発表の前情報のみ、ほんのりネタバレあります
座らせてもらった席が今までにないくらい広々として、クッションもふかふかで、飛行機の中で早々に意識を飛ばしてしまった私は気づいたらガラル地方についていた。
ひんやりとした空港の空気。ガラル地方は思ったより涼しい場所らしい。
わたしとダイゴさんは車が来るのを待っている間に、空港内のカフェで一息つくことにした。
空港内にもすでに見たことのないポケモンを連れたトレーナーがいて、内心とてもテンションが上がっている。
周りをあまりきょろきょろ見ていると、いかにも他の地方から来たって感じがして恥ずかしいのだけれど好奇心は抑えられない。
結局あちらこちらを見回しながらあたたかい紅茶の入ったカップで指を温めながらダイゴさんの待つテーブルへ向かった。
「お疲れ様、ちゃん」
「ダイゴさんも。飛行機長かったですねー」
「そうだね」
とりあえず無事について良かった。ほっと一息はきながら紅茶に口をつける。あ、おいしい。
「でもダイゴさんも飛行機乗るんですね」
「ええ?」
「だってどこでもエアームドに乗って行っちゃうから」
「さすがにこの距離はエアームドには負担だよ」
「そっか。それもそうですね」
空港に溢れるざわつき。ふと私とダイゴさんの間に沈黙が降りる。ああ、ようやく聞けるかもと思ってぽつりと口にした。
「……ダイゴさんはなぜ、ガラル地方に?」
実はガラル地方に誘われてから、ずっと聞いて見たかったことだ。どこかで聞いてみるつもりだったけれど、飛行機に乗る前は入ったことのないラウンジの綺麗さにテンパり、乗ってからは未体験のシートの広さにびびりまくり、離陸すれば快適さに爆睡。まったく聞く機会がなかった。
ガラル地方特有の広大なワイルドエリアで、新しいはがねタイプのポケモンに出会いたいとか? ダイゴさんなら大自然の中でのキャンプもお手の物だろう。
それとも何か興味のそそる洞窟の情報でも手に入れたんだろうか? 珍しい石のためにあちらこちら行って来たダイゴさんだもの。可能性は十分ありえる。
「あ、もしかして……!」
駆け足で頭に詰め込んだ、ガラル地方についての情報を順繰り思い出しているうちに、ピンと閃く。
ダイゴさんはなんだかんだホウエンリーグのチャンピオン。誰よりも強いポケモントレーナーだ。
彼の中でポケモンバトルと石とどっちが最優先なのかわからなくなることは多々あるけれど、なんだかんだ言ってダイゴさんもバトル好きなのだ。自分の腕前に自信も持っている。
彼ならばきっと、ガラル地方のポケモンリーグの盛り上がりを一度その目で見たくなったんじゃないだろうか。観戦者のほぼいない状態で一対一のポケモンバトルを行うのがホウエンリーグだけれど、ガラル地方ではジムリーダーとのバトルですら中継までされて、大観衆が詰めかけるスタジアムで行われる。
きっとそれは私たちの知らない興奮に包まれている。
うん、ありえるぞ。
ダイゴさんも気づいたかい? と言わんばかりに笑みを深めた。これは間違いない、やっぱりダイゴさんはポケモンリーグ、そこでの白熱するバトルに興味があるんだ。そう思って口を開いた時だった。
「新しい世界に出会った、ちゃんの反応が見たくてね」
「………」
「なんてね」
か、からかわれた。というか冗談ですらいちいちキザっぽいんだから。私が脱力すればダイゴさんは今度は隠すことなくあはは、と笑った。
とはいえ私も期待に胸を膨らませて、来てしまったガラル地方。楽しんでやろうじゃないの。そう思うといてもたってもいられなくなる。
気合いの熱を高まらせながら紅茶を飲み干すと、ダイゴさんも見計らったように席を立った。
「それじゃあ、行こうか」
「はい!」
気合いは十分。新たな冒険のはじまりだ。
(剣盾発売おめでとうございます! FINAL PVが熱くて気持ち盛り上がったので。ガラル地方楽しみましょうね〜!)