My beloved season calls me

愛とは、支配だろうか。

これはわたしの考えではない。
ただ、ダイゴに付き合っているとそう思わされることが多い。思わされるどころか、ここしばらく愛を注いでくれる人といえばダイゴになっていて、他の愛情に触れる機会から遠ざかってしまったわたしの中で、愛と支配がもうそろそろイコールで結びつきそうになっている。

愛とは支配だろうか。愛することはその対象を支配下に置くことなんだろうか。
それはわたしが幻想とともに抱いていた愛することのイメージとは違った。そのはずだったと、思うのだけれど……。もうそんな昔のことなんて思い出せないや。
彼からの執着を受けて、今やわたしが触れる熱情は彼が持つたった一種類なんだもの。


「――今、なんて言ったの?」
「“君を訴えることにした”」


幻聴じゃなかったらしい。まさかダイゴの口からこんな言葉が飛び出てくるとは。
ダイゴは笑顔を浮かべ続けている、わたしは笑顔のまま次のアクションが取れず固まっている。


「正確に言うならもちろん“君たち”になるんだけど、僕がやりこめたいのはやっぱりだけだよね。僕らには圧倒的な利がある。それに、ね、知ってた? デボンの法務部って優秀なんだよね。彼らは僕のためならあらゆる手を尽くしてくれる。親愛なるダイゴ坊ちゃんのためなら、ってね」


声に起伏がない。何がおかしいのかダイゴは笑っている。指を組んで、その上に乗せた顔はうっとりと目を細めて愉悦を噛みしめている。


「ふふ。訴えたら最後、君たちの負け、僕らの勝ちだ」
「……そうとは限らないでしょ」
「あれ、の勝手な考えでそんなこと言っていいの? 君一人のモノじゃないんだろ?」
「………」
「まあ君たちが僕らに勝つっていうんなら、こっちにも手がある。あ、どこまでも言いがかりをつけて裁判を長引かせるってのはどう? お金も気力もじわじわ吸い取ってあげるよ。一度頓挫した企画を再発進させるほど君たちの基盤って安定してるのかい?」


光をたっぷり取り込む窓を背にした彼。顔の中心に寄った闇から掬ったような影が不気味な笑顔に寄り添っていた。


「そんな顔しないで。は悪くないよ。僕が甘かっただけ。けど手ぬるい真似はもうやめだ。いい加減不愉快だし我慢も限界だからさ、どんな手を使ってでも潰してやろうと思ってるんだ」
「………」
「やると決めたからね。徹底的にやらなきゃ。僕も男だし」


宣告するダイゴの表情は穏やかだ。うっすらと笑ってすらいる。
不愉快と言い放ったときは特にその笑みが深まった。


「じゃあ! 次は法廷で会おう!」
「ま、待って! 本気なの……?」
「別に冗談って思われたって良い。君らが生き延びられるか、それはの態度次第だ」
「わたしの……?」
「僕の言ってることが分かったらさ、」


それは春の出来事。


「ひざまづいてくれるかな、


わたしはダイゴを怒らせてしまったのだ。