※R-15程度。ぬるい。期待は禁物でお願いします。





 ふわふわとした頭に響く、大好きな声。

「大丈夫かい?」

 肩を掴んで、助けてくれている手があるなと、ぼんやりとはわかっている。多分、ダイゴさんの手。そう思うと恥ずかしさがせり上がってくるけれど、脈に回ったアルコールが鼓動の音で上書きしてしまうのだ。

「ボクに寄っかかっていいよ。ほら、お水を飲んで」

 揺れる視界にペットボトルがゆらりと入り込む。それからダイゴさんの口元、唇が私に語りかけている。

ちゃん、わかる? お水だよ?」
「おみず……」
「そう。開けてあげるよ」

 ダイゴさんがペットボトルのキャップをとってくれた。小さな口の中で直に揺れるお水が見えて、ようやく私はそれに口を運ぶことができた。

 水の冷たさが、異物のように体を下って行く。その冷たさにすがれば、ゆっくりと私はここまでの経緯を思い出すことができた。

 ミナモにある隠れ家レストランに連れていってもらって、お酒とお料理をつまみながらゆっくりとお互いの話をしていた。
 もう普段なら寝る時間だと眠気が来てることをわかっていても、時計を見ないふりした。ダイゴさんともっといたい願う気持ちと、この人と離れたくないという迷い子のような気持ちが、そうさせた。

 多分、ここはダイゴさんの家なのだろう。点いているのは玄関の明かりだけ。視界の端でちらちらと、彼が大切に仕分けた石たちが僅かな光を反射している。本人が何もないと言って恥ずかしがるくらい、確かに彼の生活の積み重ねが見えない家。だけどダイゴさんの匂いに溢れたトクサネの家だ。

 指先にも上手に力が入らない私がこぼす前にペットボトルはダイゴさんに回収される。

「うう〜……」
「少し休んだ方が良さそうだね」

 ああ、これはもしかして、このままベッド、なのかな。
 恋人のダイゴさんはいつだって優しい。だけどその優しい手が下心を宿すこともある、と教えてくれたのもこの人だ。

「ダイ、ゴさんが、こんなことするなんて……」
「そうだね」

 こともなげに同意するんだから、ダイゴさんは悪い大人だ。と思っていたら口付けられて、舌の熱さを教えられる。

 こんなこと、と言うのはベッドに誘われたことではない。
 ダイゴさんとそういう関係に進むまで経験なんてなかった私。ダイゴさんと数回体を重ねて、最近ようやく流れは掴んだ、くらいのものだった。
 今までは全て、丁寧に気持ちや体の状態を気遣われた。私が直前で怖くなっても大丈夫なよう、いつも逃げ道も用意してもらっていて、でも覚悟を決めたら大事に抱いてくれる。

 でも今夜は、違った。ダイゴさんの気遣いは失われていない。けれど、彼は向かいの席で私が酩酊していくのを嬉しそうに待っていた。そして今意識を溺れさせているのも喜んでいる。
 私の正気は、奪われようとしている。

ちゃん、行くよ。ボクに掴まって」
「は、ひ」

 掛け声で私がどうにか身構えたのを見て、ダイゴさんが私を抱き上げる。私を気遣ったダイゴさんの指先は冷たくて、酔いが回った私には気持ちよかった。だけど心臓の近くはちゃんとどきどきと音を立てて熱くなっていて、シャツの下から体温が香る。酩酊感に嬉しさが混じってくる。

 冷たいシーツに寝かされた。楽になれるかと思いきや、視界がぐわんぐわん揺れる。瓶になってしまったみたいだ。とろりとした液体を入れられた瓶みたく意識まで揺れている私に、かぶさって見下ろす嬉々としたアイスブルー。

「恥じらうちゃんも可愛いけど、恥ずかしいのも忘れちゃうちゃんが見たくなったんだ」
「う゛……〜っ」
「もっといろんなキミが見たいんだよ」

 胸の先をいじりながら言われる。胸じゃなくて、ちゃんと気持ちいいと感じることをわかってる先端をいたずらされている。

「んあっ、ぁーっ……!」
「嫌かい?」

 快感を覚え始めれば、私が嫌だと言えなくなっていくのを知っているくせに聞くんだ。どうしよう。今日のダイゴさんは相当いじわるだ。

「嫌じゃ、ないです……」
「うん、可愛い」

 気持ち良さを拾えている。そう言えた私をダイゴさんはすかさず頭を撫で、それから軽いキスで褒める。
 キスされた。次は服の上からじゃない、直の刺激が来るかなと怯える私をダイゴさんの細められた目が射抜いていた。

「もう少しこのままだよ。今夜はどろどろにしてあげたいんだ」

 期待を見抜かれた上で焦らされた。
 快感を溜め込んで、びくびくと反応する無様な体が恥ずかしくてたまらない。けれど、ダイゴさんは言っていた。恥ずかしいのも忘れちゃう私が見たいと。なれるだろうか。そんな不安抱いてても、きっとさせられちゃうんだろうな、ダイゴさんに。
 自分の行く末が分かってしまった瞬間、指先からまたひとつ正気がこぼれ落ちて行く。

「たっぷり甘やかした後のちゃんはすごく可愛いからね」

 侵食するような、そんなダイゴさんの声色にまた背筋がぞくぞくと戦慄いた。







(「ちょっとエッチなダイゴさん夢がみたいです!!!!」というどストレートなリクエストありがとうございました!特にえっちなのは書かない人間ですが、欲望に忠実なリクエストもらうと嬉しくなっちゃったのでそれっぽいものを書きました。お粗末様でした〜!)